諫早湾の排水門開門へ
菅直人首相は15日午前、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の排水門開門を命じた福岡高裁判決(6日)について「上告しないという最終判断をした。その線に沿って今後の対応をするよう指示した」と語り、上告断念を表明した。首相官邸で記者団に語った。鹿野道彦農相が16日に同県を訪れ、長期開門調査を実施する方針とともに県側に伝え、早ければ12年度にも開門調査が始まる。上告の期限は20日で、政府は17日の閣議で上告断念を正式に決める。福岡高裁判決は「5年間の常時開門」を命じており、段階的な開門を検討してきた農林水産省の路線を転換することになる。
首相は上告断念の理由について「1997年の(水門が閉まる様子から)ギロチンと言われた工事以来、何度も現地に足を運び私なりに知見を持っていた。工事は既に終了しているが、開門して海をきれいにしようという福岡高裁の判断は大変重い」と語った。
政府筋は15日、半年間の政権運営を「仮免許」と表現した首相発言に絡めて、「(上告断念が)これから本免許になる第1号」と首相の指導力を強調した。
首相は野党時代から諫早湾の干拓問題に関心を持っており、干拓を進めたいのは農水省と業者から献金を受けている族議員だけだなどと批判してきた。福岡高裁判決後の7日には「私にとっても大変長い間取り組んできた問題で、いろんな場面が思い出される。判決への対応は政府として検討していきたい」と語っていた。
訴訟対応を検討する関係府省の協議では、農水省が「開門方法を検討中」などとして上告を求めていたが、首相が押し切った形となった。
上告断念で、営農者らに被害が及ぶとして開門調査に反発する長崎県が態度を硬化させ、営農者らによる反対運動が過熱する可能性がある。一方、開門調査を求める佐賀県などは政治決断を歓迎するとみられる。
農水省は来春にまとめる環境影響評価(アセスメント)で、開門方法について(1)開門当初から二つの排水門を全開(2)調整池への海水導入量と調整池からの排水量を3段階で増やし、最終的には排水門を全開(3)調整池の水位や流速を制限--の3ケースを検討している。
判決は「5年間の常時開門」を命じており(1)に近いと解釈でき、農水省は(1)を採用すれば調整池からの淡水が諫早湾内に急激に入るため、漁場の環境悪化などを懸念。後背地の防災と潮受け堤防の安全性確保に配慮しながら排水門を極力全開にする(2)か、これらの影響を最少にする(3)を軸に検討を進めてきた。上告断念により、開門方法などが今後の焦点となるが、常時開門なら600億円を超える対策費が必要とみられる。
諫早湾干拓地の調整池から汚水を排出すると周辺の海はこのようになります。
この汚水の排水が一番の問題です。
閉め切った後も、これをやるから環境が破壊される。
開門調査をする場合でも、まずは調整池に溜まった汚水とヘドロの処理をしてからでないと意味がありません。
イキナリ開門すれば余計に環境が悪くなるのは誰の目にも明らかです。
さて、農水省と国はどのような対策をとるのか。
これは、じっくりと見守っていかないといけませんね。
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